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キミのとなりで【気象系BL】

第18章 バレンタイン



ほんの少しの希望が、俺の口を開く。

「翔ちゃん、あのね…」
「なに?」
「あのね…」

でも、どうしてもその先を言えなくて。

いらないって言われるんじゃないかって思ったら怖くて。

思わず振り返ったら、智と潤くんが“ガンバレ”って口パクで応援してくれてた。

その声援に勇気をもらって

「これ…」

握りしめてた箱を思いきって翔ちゃんの前に差し出した。

翔ちゃんが驚いて目を丸くしたから、怖くなってギュッと目を瞑る。

翔ちゃんは何も言ってくれなくて…

沈黙に押し潰されそう。

ドキドキしすぎて息も出来ずにいたら、箱を持つ俺の手がふんわりと温かい何かに包まれた。

“何か”じゃない。

知ってる。
これは翔ちゃんの手だ…

分かったら、緊張でガチガチだった体からふっと力が抜けた。

呼吸も楽になって。
手だけじゃなくて、胸までポカポカしてきた。

そっと目を開けたら、思った通り俺の手は翔ちゃんの手に包まれていて。

目の前には大好きな翔ちゃんの笑顔があった。

「俺にくれるの?」
「…受け取ってくれる?」
「もちろん!すごく嬉しいよ!」

翔ちゃんは満面の笑顔で、喜んでくれているように見えるけど…

でも、本当に?

「好きな人以外のは受け取らないって言ってたのに?」

少し声が震えてしまった。

「カズからのチョコを受け取らないわけないでしょ?」
「なんで?」
「……特別だから」

翔ちゃんはちょっと照れたような顔をしてたけど、しっかり目を合わせてくれて。

“特別”

その言葉に思わず涙が溢れた。

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