第18章 バレンタイン
そのまま学校へ向かうと、校門前に女の子がたくさん立ってるのが見えた。
翔ちゃんを見て一斉に色めき立つ。
あの子たちみんな翔ちゃんを待ってたんだ。
こんな寒い中いつからここにいたのかな…
早い時間なのにみんなしっかりお化粧して可愛くしてて。
みんなそれくらい翔ちゃんのことが好きなんだ。
近付いていくと、女の子たちがキャーキャー言いながら翔ちゃんを取り囲んだ。
「翔ちゃん、俺先に行ってるね」
仕方ないって分かってても翔ちゃんがチョコを受け取る所は見たくなくて。
さっさと校内に入ろうとしたら
「カズ待って!すぐだから」
翔ちゃんに引き留められてしまった。
こんな場面見たくないのに、見てなくちゃいけないの?
泣きたい気持ちになるけど。
でも無視して先に行くことも出来ないし。
仕方なく平静を装って、少し離れたところから見守ることにした。
きっと今日はこんな光景を、まだあと何回も見るんだろう。
しっかりしろ!俺はただの友だち!
こんなことで動揺してたら、翔ちゃんにおかしいって思われちゃうよ。
どうしても胸は苦しくなってしまうけど、顔に出さないように精いっぱい気を引き締めた。
翔ちゃんは、一斉に差し出されたチョコを少し困ったように見つめてたけど
「ごめん。受け取れない」
静かに、でもハッキリと断った。
一瞬耳を疑った。
翔ちゃんが…断った…?
本当に?
なんだか信じられなくて。
でも女の子たちから小さい悲鳴が聞こえて。
それで本当なんだって分かった。