第18章 バレンタイン
ーNsideー
2月14日
綺麗にラッピングした翔ちゃんへのチョコと、みんなで食べる用にって姉ちゃんからもらった余ったクッキーを入れた紙袋を忘れずに持って。
少し緊張しながらいつもの待ち合わせ場所へ向かった。
いつもなら俺より早く来てる翔ちゃんが今日はまだいない。
もしかしたら駅で女の子に捕まってるのかな…
そう思ったら、やっぱりモヤモヤした。
でも、嫌だけど仕方ない。
なるべく考えないようにしよう。
それより、いつ渡すかを考えなくちゃ。
やっぱり朝のうちがいいかな。
他に誰もいないとき。
それならあんまり恥ずかしくないかも。
渡すシミュレーションをしてドキドキしていたら、翔ちゃんが走ってやってきた。
「ごめ…待たせて…」
息があがって、額にうっすら汗が滲んでる。
「そんなに走らなくて大丈夫だったのに」
「こんな寒い中カズを待たせたくなくてさ」
「いいのに…でも、ありがと///」
朝から走らせちゃって申し訳ない。
でも俺のために、こんなに息を切らすほど走ってくれたことが嬉しい。
……あれ?
普通に会話を続けながら、こっそり翔ちゃんの手元を見て心の中で首を傾げる。
翔ちゃんがチョコを持ってない。
バッグの中?
荷物が多い翔ちゃんのバッグはいつもパンパンで、とてもチョコが入る余裕があるとは思えないけど。
女の子に捕まってたわけじゃないのかな?
でも、じゃあ何で遅かったんだろ?
寝坊とか…?翔ちゃんが…?
きっと違うよね。
気になるけど、何となく聞くことは出来なかった。