第17章 誕生祝い to SHO
この手を振り解いて全力で滑って逃げれば、潤は追いつけないよね。
智は滑れない潤を見捨てないだろうし。
そしたら2人にしてあげられる…
俺の手と繋がってる方の潤の手をぼんやり見つめながら、そんなことを考えていたら。
「おい!」
耳元で怒気を含んだ潤の声が聞こえて。
びっくりして顔を上げたら潤が怖い顔で睨んでた。
「なんか変なこと考えてるだろ!」
「へ、変なことって?!なんにも考えてないよっ!」
焦って答えたら声が裏返っちゃって。
智が吹き出した。
「絶対考えてただろ…本当に嘘つけないやつだな」
潤は睨むのはやめてくれたけど、今度は呆れたみたいな顔になった。
「それが雅紀の長所なんだってば」
「まぁ、そうなんだけど」
クスクス笑う智に頷くと、潤は視線を俺に戻した。
また怖い顔してる。
「俺を見捨てたらマジで恨むぞ!あいつらの言うこと真に受けんなよ?あんなの人を揶揄って面白がってるだけなんだからな?」
「潤だってよくニノたちのこと揶揄ってるじゃん。だから仕返しされるんじゃないの?」
「ゔっ…」
智の指摘に潤は言葉に詰まったけど
「と、とにかく!俺は本気でまだ滑れねーんだよ!」
「滑れないこと、なんでそんなにいばれるの?」
開き直ったように胸を張るから、智がケラケラ笑い転げた。
つられるみたいに俺も笑っちゃって。
「うるせー!いいから、2人とも手離すんじゃねーぞ!」
潤はキレながらも、俺と智の手をキツく握り直した。
「王様が復活したね」
「ね」
智とクスクス笑いながら、胸があったかくなるのを感じた。