第16章 正月
境内は大勢の人で溢れてて。
お参りするための長い行列が出来ていた。
ちょっとうんざりした気持ちにならなくもないけど、おとなしく列の最後に並ぶ。
苦手な人混みの圧迫感も、翔ちゃんが隣にいてくれるだけであまり気にならないし。
今日も翔ちゃんははぐれないようにって手を繋いでくれていて。
それだけでもう無敵な気分になる。
ここは小さい神社だし、5人で固まってるから迷子にはならないと思うけど。
手を繋いでられるのが嬉しいから口には出さない。
並んでる間に翔ちゃんが参拝の作法を色々教えてくれた。
鳥居の通り方や参道の歩く場所。
手水舎での手や口の正しい清め方とか。
参拝の基本はニ拝二拍手一拝だってこととか。
具体的なやり方や、どうしてそうするのかの理由もちゃんと説明してくれるから分かりやすくて面白いし。
今まで何となくで適当にやってたから、すごく勉強になる。
翔ちゃんは本当に何でも知ってて。
すごい博識なのに、そのことを鼻に掛けたりしない。
そんな翔ちゃんがカッコよくて、また好きになっちゃう。
こっそり翔ちゃんに惚れ直しつつ、5人でわいわい喋ってたら、あっという間に順番がきた。
5人で横一列に並んで、お賽銭をいれて、みんなで鈴を鳴らして。
二拝二拍手…拍手は手をずらして…翔ちゃんに習ったばかりの作法を思い出しながら実践して。
目を閉じて静かに手を合わせた。
今年もこの5人で楽しい思い出をたくさん作れますように。
どんな時でもずっと翔ちゃんの隣にいられますように。
ちゃんと努力するから。
どうか翔ちゃんの1番でいさせてください。
欲張りでごめんなさいだけど。
どうしても1つに絞れなかった願いごとを一生懸命祈った。