第16章 正月
待ち合わせ場所に着いた時には息も絶え絶えで。
「カズ!?」
「ニノ大丈夫?」
驚いた翔ちゃんと智がすぐに駆け寄ってきて支えてくれた。
「ゆっくり息して」
「水飲める?」
ゼェゼェしちゃって何も喋れない俺の背中をさすったり、水を差し出してくれたりして。
口元に差し出された水を遠慮なくゴクゴク飲ませてもらって、やっと人心地ついた。
「はぁ…ありがと」
「ちょっと落ち着いた?」
翔ちゃんが心配そうに俺を見てるから、急いで頷いたら安心したみたいに微笑んで頭を撫でてくれた。
「ニノがこんなになるまで走るなんて珍しいね」
智はなんだか妙に感心してて。
「うっかり昼寝しちゃってて…遅刻するかと思ったから…」
「そんな急がなくても大丈夫だったのに」
理由を説明したら、のほほんとそう言ってくれたけど。
「みんなを待たせたら悪いしさ……早く会いたかったんだもん」
誰に…なんて言わなくても智には分かる。
にっこり微笑まれてちょっと恥ずかしくなった。
だって、夜中寝る直前まで電話してたけどさ。
それでもちょっとでも早く実物の翔ちゃんに会いたかったんだもん。
なら出掛ける前に寝るなよって話だけど。
「遅くまで電話しちゃったせいだね。ごめんね」
「違うよ!翔ちゃんのせいじゃなくて…」
当たり前だけど、翔ちゃんには智との会話が聞こえてて。
謝られてしまったけど、翔ちゃんのせいなわけない。
翔ちゃんは何度も眠くないか聞いてくれたのに、俺がちょっとでも長く話してたくて、なかなか電話を切れなかったんだ。
「翔ちゃんとの電話が楽しかったから、俺が切りたくなかったんだよ…だから自業自得ってゆーか…とにかく翔ちゃんのせいじゃなくて…」
一生懸命訴えてたら、翔ちゃんがくしゃっと破顔した。
「楽しいと思ってくれてたなら嬉しいよ」
それが本当に嬉しそうな笑顔だったから、俺もすごく嬉しくなった。