第16章 正月
用意してもらった服にバタバタ着替えたら
「髪の毛いじる時間はなさそうだから今日は帽子ね」
姉ちゃんが頭にニット帽を被せてくれた。
翔ちゃんにもらったマフラーも忘れずに首に巻いたら
「このマフラー本当に手触りいいわね。今度貸してよ」
姉ちゃんがニヤニヤしながらそんなことを言う。
「これはダメ!絶対ダメ!」
揶揄われてるだけって分かってるけど、全力で拒否してしまう。
「そうよね〜大好きな翔ちゃんからのプレゼントだもんね〜♡貸せないわよね〜」
「翔ちゃんって呼ぶのもダメ!!」
俺の反応を見てますます楽しそうにニヤニヤする姉ちゃんを一喝したら
「はいはい、ごめんね。ほら、急がないと本当に遅刻よ」
軽くいなされて、玄関から外へ追い出すように背中を押された。
「むぅ」
「むくれないの。笑顔笑顔!」
こんな顔にさせたのは誰だよ!って思うけど、今は口喧嘩してる時間はない。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
見送ってくれる姉ちゃんに手を振る余裕もなく家を飛び出した。
今日行くのは、学校の近くにある地元の人しか来ないような小さな神社。
普段は閑散としてるけど、お正月はちょっとだけど屋台も出るし人もたくさん来る。
大きい有名なところに比べたら全然なんだろうけど。
去年は智と雅紀と3人で受験の合格祈願に行ったんだけど、今年は翔ちゃんと潤くんも一緒に5人で行くんだ。
神社がうちから近くて本当に良かった…
お正月から全力疾走して死にそうだけど、待ち合わせには何とか間に合いそうだ。