第14章 誕生祝い to SATOSHI
俺の服を握り締めたニノのクリームパンみたいな手。
それは翔くんにしてるみたいな、きゅっと握るとかそんな可愛い感じじゃなくて、ガシッと力任せなんだけど。
服を握ったまま離さない小さな手が可愛い。
「いきなり何なの?」
「智たちの邪魔すんな!」
でも至って穏便に尋ねた俺に対して、ニノは最初から喧嘩腰で。
可愛いのは手だけだった…
「はぁ?邪魔なんてしてないだろ!」
ニノが喧嘩腰なら、俺だって当然そうなるわけで。
だって本当に俺には智たちを邪魔するつもりなんて全くないし!実際なにもしてないし!
「してる!あんな近くでガン見してたら邪魔だろ!」
「それならニノの方がさっきまで智を独り占めして邪魔してたじゃん!」
「ゔっ…うるさいな!」
意外と良いところを突いたらしい。
珍しくニノが口ごもる。
自覚はあったのかもしれないな。
「だって、俺も智が大好きなんだもん!」
でもすぐに開き直ったように胸を張った。
「俺も好きだっつーの!」
「雅紀はダメ!」
「なんでだよ!!」
「理由なんてないけどダメー!!」
「ひどくね?」
ニノと話してるとつい売り言葉に買い言葉になっちゃうけど。
でもこれが俺とニノなんだよな。
こんなやり取りだってニノは俺としかしないし。
お互い本気で言い合ってるわけじゃないのも分かってる。
翔くんは羨ましそうに俺を見てるし。
そんな目を向けられたら、ほんのちょっと優越感を感じてしまう。
まぁ、ある意味ニノにとって俺は特別な存在なんだろうと思う。
でもこんなポンポン可愛くないこと言われるよりさ、翔くんみたいに可愛く甘えられる方が何倍もいいに決まってるのにね。
でも俺に素直に甘えるニノなんて想像もつかないし、実際にやられたら気持ち悪いかもね。