第14章 誕生祝い to SATOSHI
いつもと違う角度の翔ちゃんに見惚れながら歩いてたら、翔ちゃんがちらりと振り返った。
そのまま、じーっと俺を見てるからちょっと恥ずかしくなる。
「なぁに?」
もしかして俺、にやけすぎてキモい顔になってるのかな…でも嬉しくて顔が戻らないんだもん。
「…あ、もしかして歩きにくい?」
俺が歩きにくいってことは、翔ちゃんも同じなのかもしれない。
「離した方がいい?」
本当は離したくなんてないけど、翔ちゃんの邪魔にはなりたくないから。
心配になって聞いてみたけど
「違う違う!…その、カズが可愛いなぁって思ってただけ」
翔ちゃんは俺の心配を否定すると、またさらりとそんなことを言う。
翔ちゃんに可愛いって言ってもらえたら、やっぱり嬉しい。
でも消えたはずのモヤモヤはまだ残ってたみたい。
「………智よりも?」
「智くん?なんで?」
つい口から出ちゃった智の名前に翔ちゃんは首を傾げる。
「そりゃ智くんも可愛いとは思うよ。…でもね、俺にとってはカズの方がずっとずっと可愛く見える。カズが俺の一番だからね」
それでも、ごく当たり前のことみたいに答えてくれた。
さっき智が言ってたことと同じだ。
でも翔ちゃんの口から直接聞けると全然違う。
「一番?」
「一番だよ」
「くふふふふふ♡」
我ながら気持ち悪い笑いが止まらない。
でも仕方ない。
幸せなんだもん。
翔ちゃんの言葉ひとつで、ちっちゃなモヤモヤは全部吹き飛んで行った。