第14章 誕生祝い to SATOSHI
「そこのお二人さん、そろそろ日が暮れるから水族館に戻りませんか?」
「いつまで抱き合ってんだよ…ちょっとは人目を気にしろ!」
明らかに面白がってそうな雅紀と、呆れ顔の潤くんに声を掛けられて、ハッと我に返った。
「ああ、もうそんな時間か」
翔ちゃんは淡々と呟いてスッと離れて行く。
そんなの当たり前なんだけど、なんかさみしい。
今日は智とずっとくっついてたから、ちょっと翔ちゃん不足なのかな。
さっき智に言われた“やってみなよ”って言葉が頭を一瞬よぎって。
離れてく翔ちゃんの服の裾を掴んでみた。
急に引っ張られて驚いたのか、翔ちゃんが目をまん丸にして振り向く。
俺を見て、俺に掴まれてる裾を見て。
でも何も言ってくれなくて。
絶対喜ぶって言ったのに…
智のうそつき…
…なんて。
智に八つ当たりしちゃダメか。
やっぱり智みたく可愛くないとダメなんだ。
それはもうどうしようもないから仕方ない。
自分から飛び込んだとは言え、ぎゅってしてもらえたんだから、もう十分だと思わなきゃね。
翔ちゃんに抱きしめてもらえたから、それだけはダンゴムシに感謝しないこともない…でも大きらいだけど!
少し悲しくなった気持ちをダンゴムシで誤魔化して、掴んだ裾からそっと手を離そうとしたら
「えっ!?」
急に翔ちゃんが大きな声を出すから、びくっと肩が揺れた。
なんだろ?俺何かしちゃった?
俺に服掴まれたのそんなにイヤだった?
「あ…ごめん、大きい声出して…」
びくつく俺に気付くと翔ちゃんが慌てて謝ってくれる。
「ううん…俺何かしちゃった?ごめんね?」
「ちがうよ、カズは何も悪くないんだ。…その、手をね…」
「て?」
何だか歯切れの悪い翔ちゃん。
口ごもってるから、じっと続きを待ってたら、翔ちゃんの頬が少し赤くなった気がした。