第14章 誕生祝い to SATOSHI
離れるタイミングがつかめないうちに、智はいそいそとガチャガチャをまわし始めた。
出てきた景品を嬉しそうに取り出すと
「うわー!すごい!リアル!よく出来てる!」
ぱああって音が聞こえそうなくらい智の顔が輝いた。
「見て!ニノ!」
智が俺の目の前に、繋いでない方の手を差し出す。
その上には丸まったでっかいダンゴムシが乗ってた。
「ひぃっ!!」
思わず悲鳴が出る。
智の言う通りすごくリアルで、リアルなのにでかくて気持ち悪い!てか、こわい!
「やだっ!!そんなの見せないでっ!!」
思わず繋いでた手を振り解いて後ずさったら、智は自由になった両手で嬉しそうにダンゴムシを開いた。
細部までリアルで足とか本当に気持ち悪い!
ぞわぞわする!
でも智はびっくりするくらいの満面の笑顔で。
楽しそうなのはいいんだけどさ。
いたずらっ子みたいな顔して俺を見るから、嫌な予感しかしなくて身構える。
そしたら案の定、ニコニコした智が
「ニーノ♡」
開いたダンゴムシを手に寄ってくるから全力で逃げた。
「翔ちゃんっ、たすけて!」
近くで見てた翔ちゃんの後ろに逃げ込んで、その背中にしがみつく。
それでもまだ智はダンゴムシを持って近づいて来ようとする。
「こっち来ないで!やだ!ばか!きらい!」
俺が虫きらいなの知ってるくせに!
絶対俺の反応を面白がってるんだ!
その証拠にきらいって言ったのに爆笑してるもん!
「カズ?どうしたの?」
心配そうに翔ちゃんがくるりと振り向いたタイミングで、智がひょいってダンゴムシを顔の前に出すから
「やっ!!」
とっさに翔ちゃんに抱きついてその胸に顔を埋めたら、翔ちゃんはごく自然に抱き締めてくれた。
俺が世界で一番安心出来る場所。
ここにいれば何があっても大丈夫って思える。
今の敵はダンゴムシ!
負けないもん!