第14章 誕生祝い to SATOSHI
「潤も…ついてる…」
隣では真っ赤な顔した智くんが、ぎこちなく潤の口元を拭ってあげてて。
「えっ…あっ…さんきゅ…」
潤も真っ赤になって動揺してて。
カズはニマニマしながら照れまくる2人を見てる。
さっきの耳打ちはこれだな。
確かに真っ赤になってる潤たちを見てると、ニマニマしたくなる。雅紀も似たような顔してるし。
そして、確かに俺はこれくらいじゃ動揺しなくなるくらいにはカズとこういうことをしてるのかもと気付いた。
だからやっぱりそれ以上を求める俺が贅沢なんだろうな。
クレープを食べ終わっても、まだ日暮れまでは少し時間があって。
チケットがあるから水族館に戻る前に展望台に行ってもいいかもと思ったけど、そっちも暗くなってからがいいって言われて。
適当にふらふら服屋とか本屋とかを見て時間を潰すことにした。
実は密かにカズにクリスマスプレゼントをあげたいと考えていて。お弁当のお礼…って口実で。
だからカズが興味のあるものをこっそりリサーチする良い機会だと思ったんだけど。
カズは何にも興味を示さない。
退屈なのかちっちゃくあくびとかしちゃってて。
服とか全く興味ないんだろうな。
全部お姉さん任せだって言ってたもんな。
あくびを噛み殺してるカズもすっごく可愛いけど、プレゼントの参考にはならない。
まぁ、まだ時間はあるからたくさん悩もう。
こんな悩みだって、カズを想ってのことだから楽しいし愛しい。
しばらく歩いていたらカズと智くんが大量のガチャガチャが並ぶコーナーで足を止めて、なにやら楽しそうに1つ1つ覗き始めて。
潤も近づいて行ったと思ったら、しばらくワイワイ騒いだ後にカズが悲鳴を上げながら逃げてきた。
「翔ちゃんっ、たすけて!」
俺の後ろに隠れて、背中にぴったり張り付く。
カズはあんなにずっとべったりだった智くんから離れただけじゃなく
「こっち来ないで!やだ!ばか!きらい!」
近寄って来ようとする智くんに、ぽんぽん悪口を投げつけて。でもそんなこと言われても智くんは怒ることなく爆笑してる。
俺には何がなんだか分からなかったけど。
例え壁代わりでも、カズが俺のところに戻ってきてくれたことが嬉しくてたまらなかった。