第14章 誕生祝い to SATOSHI
まだ全部見れていないという智くんに合わせて、もう一度館内を5人でまわる。
今度はカズがひっきりなしに話し掛けて、あっちこっち引っ張りまわすから、もう智くんが集中モードに入ることはなくて。
もしかしたら智くんはもう少し静かにゆっくり見たいんじゃないのかなと思わなくもない。
「智のやつ派手に振り回されてんな」
潤も同じことを感じたのか、少しだけ心配そうな目を智くんに向けたけど。
「いつものことじゃん。智はニノのワガママなんて慣れっこだよ。それにああやってニノを甘やかすの大好きだからね」
雅紀はあっさり笑い飛ばした。
確かに雅紀の言う通り、カズに振り回されながらも智くんはずっと楽しそうにニコニコしてて。
智くんが楽しいなら、俺たちに言えることは何もないか。
「もうクリスマス飾りとか早くね?」
「あと1ヶ月くらいあるのにな」
「ハロウィン、クリスマス、お正月って、冬はイベントが多いよね〜」
カズたちがべったり離れないから、自然と残り3人で固まって。
目だけは2人から絶対離さないようにしながら、他愛もないことをずっと喋ってるんだけど。
それがなんだか楽しくて、ちょっと新鮮な気持ちになって。
そう言えばこうやってカズ以外とゆっくり話すことが減っていたかもしれないなと気付いた。
もちろんわざと避けていたとかじゃないし、自覚は全くなかったけど。
最近の俺はカズのことが好きすぎて、視野だけじゃなく自分の世界まで狭めてしまっていたのかもしれない。
カズへの想いは大切にしたいけれど、それだけになってしまうのは良いことではないだろう。
カズにはカズの世界があって大切な人がいるみたいに、俺も俺で自分の大切なものを大切にしないといけないな。
まぁ、どうしたって一番大切なのはカズなんだけど。