第14章 誕生祝い to SATOSHI
ーMsideー
翔たちがひとしきり騒いでから去って行った。
やっと静かになった…
結局3人仲良く手を繋いで行ったけど。
ご機嫌なのはニノだけで、翔も雅紀も何とも言えない顔をしていた。
雅紀は翔に悪いって思ってそうで。
でもその表情の中には確実に喜びも見えて。
なんだか切ないような気持ちになった。
俺が何を思ったってどうにもならないんだけど。
せめて今この時も雅紀が楽しく過ごせていますようにと祈るような気持ちで願った。
人混みに紛れていく3人の背中を見送って、また視線を智に戻す。
絵を描いてる時みたいな真剣な横顔。
魚や水の反射が映り込んだ瞳はキラキラゆらゆらしていて、とても綺麗だ。
今日のこの景色は智の目にどんな風に見えてるんだろう?またいつか絵にして見せてくれるかな?
智の意識がいつこちらに戻ってくるかは分からないけど、ショーまではまだ時間もあるし。
ま、のんびり待とう。
俺は智を見てるだけで楽しい。
本当に整った顔してるよな。
ふにゃふにゃ笑ってると可愛いけど、今みたいに真顔だと綺麗さが際立つ。
どうせ智は気付かないだろうと近くから遠慮なくその顔を見ていたら、ふいに智が瞬きをして。
お?と思う間もなく、智がくるりとこちらを向いた。
「わぁっ!」
「…いい加減、俺の顔に慣れてくんない?」
こうやって驚かれるのは何回目かね?
毎回地味に傷付くんだけど。
「俺そんなに怖い顔してるか?」
「してないしっ!こわくないよっ!」
ちょっと心配になって聞いてみたら、食い気味に否定してくれたから、とりあえず安心する。
「ごめん…だってすごい近くにいたからさ…」
智はちょっと赤くなりながら、もごもごと謝ってくれた。
まぁね、真横に立ってたからね。
ものすごい近距離で智のこと見てたからね。
智が思ったより早く正気に戻ったからうまく取り繕うことも出来なかったし。
まぁ仕方ねーか。