第14章 誕生祝い to SATOSHI
潤と智くんを2人にするのはいい。
俺も賛成だし、雅紀だってそうだろう。
でもその上で俺がカズを独り占めしたら…
雅紀がどんな気持ちになるかなんて、そんなの想像するまでもなく分かることなのに。
ただカズを見失いたくない、カズに触れていたい…そんな自分の欲だけでカズの手を取った俺に対して、カズはちゃんと雅紀のことも考えていた。
俺を拒絶することなく、雅紀の手も取ったカズ。
本当はヤキモチを妬くどころか、カズに感謝しないといけないんだ。
今のこの複雑な気持ちは、雅紀のせいじゃない。もちろんカズのせいでもない。
雅紀への嫉妬はあるけど、それだけじゃなくて。
カズに関しては途端に視野も思考も狭まってしまう自分が情けなくて、小さい男だってことを嫌ってほど自覚させられて。
そんな様々な感情が入り混じって、こんな気持ちになってるんだ。
こんな情けない、ダメダメな俺だけど。
カズの大切な人は俺も大切にしたい。
大切に出来る男になりたい。
カズの手を握りながら、そう思った。
のんびりと屋内展示を見てまわってから、屋外に出る。
「アシカが空を泳いでる!」
目を輝かせてまた走り出しそうになるカズを
「ニノ!走んなって!」
「アシカは逃げないからゆっくり行こうね」
雅紀と2人、ほぼ同時に手を引いて止めた。
「…はぁい」
ちょっと口は尖っちゃってるけど素直に頷いたカズは歩く速度を緩めた。
それでもまだ早歩きだけど。
ついクスリと笑ったら、雅紀もすごく優しい目でカズを見て笑ってて。
雅紀もカズを大切に想う気持ちは俺と一緒なんだって改めて思ったら、なんだか3人で手を繋いでることもあまり気にならなくなった気がした。