第14章 誕生祝い to SATOSHI
翔くんが前売り券を買ってくれてたから、チケット売り場には並ばずに済んで、程なくして中に入れた。
「わぁー♡智、行こっ!」
「わわっ、ちょっと…」
入るなり目を輝かせたニノは、智をぐいぐい引っ張りながら小走りで水槽に突進して行った。
「こら!子どもじゃねーんだから走るな!」
それを潤が急ぎ足で追いかけて、ニノをとっ捕まえて説教してる。
「はーい。ごめんなさい、お母さん」
「誰がお母さんだ!」
「あはは!」
ニノは真面目な顔して謝るフリをしながら潤をからかってて。
絶対反省してないな、あれ。
お母さん呼ばわりされた潤は怒って、智は爆笑してる。
「智、あっちに大きい水槽があるよ!」
ニノは怒る潤を無視して、また智を引っ張ると、今度は走ってはいないけど人混みをスルスルすり抜けて行ってしまう。
「潤、雅紀、行くぞ!見失う!」
すぐに翔くんが後を追って行くのを、ため息を吐いてる潤と追いかけた。
人の隙間を縫って進んで行くと、2人は目をキラキラさせながら、小さい子たちに混ざって巨大水槽に張り付いてた。
その背後に見守るみたいに翔くんが立ってたからその隣に並ぶ。
見上げた水槽には大小さまざまな魚たちが泳いでる。
色とりどりの魚は綺麗で見てて癒される。
水族館なんて久しぶりに来たけど楽しいな。
少し視線を移せば、夢中で魚を見てるニノの後ろ姿が目に入って。
キョロキョロ魚を目で追ってて、子どもみたいで可愛い。
サメとか大きい魚が近づいて来るとびくっと怯えたりしてて。
もともと魚があんまり得意じゃないもんな。
大きいのは怖いんだな。
可愛くて、でもおかしくて。
ニノにバレないように小さく笑った。