第13章 体育祭
ピストルの合図でリレーが始まった。
一斉に飛び出す選手たち。
「潤くーん!!」
潤くんは速い。
すぐに先頭に飛び出した。
でもやっぱり選抜だからどの選手もみんな速くて、その差はほとんどないくらい。
みんな声を上げて自分のチームの応援をしてて。
気付けば俺も身を乗り出すみたいにして声を張り上げてた。
潤くんから2番走者の智にバトンが渡る。
バトンを渡す瞬間に2人で何かアイコンタクトしてて、ちょっとほっこりした気持ちになった。
「智ー!!頑張れー!!」
智から先輩へ、また次へ。
どんどんバトンが繋がって。
抜いたり抜かれたりしながら、少しずつ差が出てきて。
翔ちゃんにバトンが渡った時にはうちのチームは2位だった。
頑張れば逆転出来るかもしれない距離。
ドキドキし過ぎて心臓が痛い。
「しょーーちゃーーーん!!!」
夢中になって翔ちゃんの名前を叫ぶ。
何度も何度もそれしか言葉を知らないみたいに。
頑張って
頑張って
祈るように拳を固く握り締める。
ふいに走ってる翔ちゃんと目が合って。
ほんの一瞬翔ちゃんが笑った気がした。
翔ちゃんはそのまま、まっすぐ俺に向かって走ってくる。
そんなわけないんだけど。
そんな気がした。
周りの音が聞こえなくなって、何も見えなくなって。
ただ翔ちゃんの名前だけを叫んで、翔ちゃんだけを見つめる。
ぐんぐん翔ちゃんの走るスピードが上がる。
前を走る背中に少しずつ近づいて行く。
ゴールの手前で並んで、最後はデッドヒートになって。
大歓声の中、ゴールテープを切ったのは翔ちゃんだった。