第13章 体育祭
体育祭は接戦のまま進んでいって、優勝の行方は最終種目の選抜リレーで決まることになった。
応援席のボルテージも最高潮だ。
盛り上がりすぎて一種異様な空気になってて、走らない俺まで何だかドキドキしてしまう。
「行ってくるね」
「がんばって」
そんな空気の中でも翔ちゃんは特に緊張してる様子もなくて。
笑顔を見せる翔ちゃんに対して、見送る俺のがぎこちない。
緊張する俺を見た翔ちゃんはふっと微笑むと
「そんな顔しないで。カズに優勝をプレゼントするから…見ててね」
俺の手を取ってそっとキスをした。
「おおおっ!!!」っていうどよめきと
「ぎゃーーーっっ!!!」っていう悲鳴
色んな声が入り混じって響き渡る中、俺の頭は真っ白で。
また…キスされちゃった…
何テンポか遅れて理解して、ぼんっと顔が熱くなった。
緊張のドキドキが違うドキドキに変わる。
全身が心臓になったみたいにバクバクしてる。
でも俺は動揺しまくりだというのに
「智くんもいなくなるから、くれぐれもカズのこと…」
「分かってるって」
「1人にしないし、目も離さないから」
当の翔ちゃんは何事もなかったみたいに普通の顔して、タッキーたちと何かおしゃべりしてて。
まだ頭がぼーっとしてて、耳に届いた会話の内容もうまく理解できないけど。
翔ちゃんが落ち着いてるのは分かる。
約束の証のキスは2回目だって俺にとっては心臓が止まりそうになるくらいの大事件なんだけど。
翔ちゃんにとっては指きりと同じくらいの感覚なのかも。
こんなに動揺する俺の方がおかしいのかな。
でも動揺するのは翔ちゃんのこと好きだからで。
翔ちゃんが平然としてるのは俺のことなんて何とも思ってないからで。
当たり前に分かってることでも、目の前に突きつけられるとやっぱりちょっと悲しい。