第13章 体育祭
「タッキーがまだあるよって言うから、翔ちゃんたちの分ももらっておいたんだー♡」
こんなもん、余るくらい準備するか?
滝沢のやつ、こうなることを狙って最初から用意してたんじゃないだろうな…
……ていうか今、翔ちゃん“たち”とか言ったか?
「次は潤くんね」
嫌な予感はあっという間に的中した。
ニノはにこやかに俺に手を伸ばしてくる。
「やだよ!」
とっさに後ずさってその手を躱すと、ニノの眉毛が八の字になった。
「なんで?」
「なんででも!」
「智ともおそろいだよ?」
「おそろいとかそう言う問題じゃない!」
そもそもなんで俺たちまでおそろいにする必要があるんだ?
こんなの似合うニノと智だけで十分だろ!
でも訴えてもニノは納得してくれない。
「なんでー?みんなでおそろいで雅紀の応援しようよ…」
うるうると見上げてくるニノの上目遣いの瞳。
「うっ…」
みんなこの顔に弱すぎだろって思ってたけど。
どうやら俺も弱いようだ。
捨てられた子犬みてーな顔すんだもん。
ずるいだろ…
「潤くんもおそろいしよ?しゃがんで?」
首をこてっと傾げて。
計算でやってんならあざといって怒れるけど、無意識っぽいし。
あんまりキツイ言い方したら泣くんじゃないかと思わせる空気があって無駄に緊張する。
これ以上突っぱねたらこっちが悪いことしたみたいな気になるやつだろ、これ。
本当にずるい…
深い深いため息をついて、結局黙ってニノに合わせて屈んだ。
すぐにご機嫌な笑顔になったニノの手が伸びてくる。
小さい手は器用に動いて、俺の前髪も手早く結ばれたようだった。