第13章 体育祭
「翔ちゃん、ちょっとだけかがんでくれる?」
応援席に戻ると、にこにこしたニノが翔にそんなお願いをした。
「え?何?」
翔は何だか分かってないんだろうけど、とりあえずニノに言われるまましゃがむ。
「ありがと♡」
ニノはどこから取り出したのかリボンのついたヘアゴムで翔の前髪を結んだ。
「カズ?何?」
自分では見えない位置だから、翔は何をされたのかイマイチ分かってないようだけど。
「ぶふっ…」
思わず吹き出してしまった。
だって女装してるわけでもないのに翔が頭にリボンつけてるんだぜ?
ニノや智はやたらしっくりきてるけど、翔には違和感しかない。
「おい、潤…」
「翔ちゃん可愛いー♡おそろいだよ♡」
笑った俺を睨んで翔が何か言おうとしたが、それは嬉しそうなニノの声によって遮られた。
「…可愛い?おそろい?」
翔はそろそろと前髪を触って、ようやく理解したらしい。
「これ…」
翔が何とも言えない顔になると
「翔ちゃん、俺とおそろい…やだ?」
嬉しそうににこにこしてたニノの顔が曇った。
「…やっぱり男がリボンつけてるなんて変だと思ってた?」
悲しそうにその瞳が揺れ始めたのを見て
「わー!思ってない!カズはめちゃくちゃ可愛いよ!」
翔がめちゃくちゃ焦り出した。
「…じゃあおそろいがやだ?」
「カズとのおそろいが嫌なわけない!」
嫌なのはおそろい云々ではなく、自分がリボンをつけてることだろうけど
「本当?良かったー♡」
ニノにはそこは伝わらないらしい。
安心したように笑うニノに、翔はもう何も言えないようで、ただひきつった笑顔を浮かべていた。