第13章 体育祭
我ながらどうしようもないと思うけど、その時はそれ以上何も考えられなくなって。
気付いたら智の手を取って、綺麗な指先にキスを落としていた。
もし智が姫になりたいなら、相手の王子は俺でありたい。
そこは他の誰にも譲れないし、譲る気もない。
真っ赤になった智を見て強くそう思って。
自分の独占欲の強さにふっと笑いが溢れた。
それを自分が笑われたと思ったのか、赤い顔のままの智が不機嫌になる。
それでも、怒って拳を握り締める姿さえも可愛く見える自分の重症っぷりがおかしくて。
これ以上智を怒らせたくないのに、笑いはなかなかおさまってくれなかった。
「翔のせいで俺まで怒られた」
「はぁ?なんで俺のせいなんだよ?」
滝沢に怒られてつい愚痴ったら、翔が聞き捨てならないとばかりに反論してきた。
「翔がいきなりあんなことするからだろ」
「潤だってしてたじゃん」
「だから、それは…」
そのまま言い争いになりかけてたら
「どっちもどっちだ!2人とも反省しろ!」
怖い顔した滝沢に、ぺし!ぺし!と頭をはたかれて、一喝された。
「ごめん…」
「悪かった…」
翔と揃って素直に謝ったら
「よろしい!以後、授業中は慎むように!」
滝沢の表情も和らいだ。
「…で、本題。翔、ニノを他の競技に出す気は?」
「ない!」
「だよな」
食い気味にきっぱり断る翔に、滝沢はあっさり頷く。
分かってて聞いたんだろう。
「その分、翔の出場種目増やすぞ」
「ああ、それでいいよ」
ニノを出すのがそんなに嫌なのか。
自分が多く出る方が何倍もマシだと思うくらい。