第13章 体育祭
「智は何出るの?」
「なんだろ?」
そういえば、翔くんが面白くてそっちに気を取られてたから自分のことは気にしてなかった。
競技名と名前が書かれてる黒板を確認してみる。
「選抜リレー…だけかな?」
「ほかは名前書いてないね」
俺もニノも全員参加の以外は1つだけ出ればいいみたい。
まぁ、ニノは翔くんがあれやこれや言って阻止したからだけど。
「智もリレーかぁ。走るの速いもんね!」
「…っていうかさ、なんでニノは選ばれてないの?ニノだって速いじゃん」
他人事みたいに言うけど、ニノだってかなり速いはずなのに。
「えー?なんでだろうね?ふふっ」
不思議に思って聞いてみたら、すっとぼけたフリして笑う。
「ねぇ…もしかしてだけど、タイム計測のとき手抜いて走った?」
「えへ♡」
小首を傾げて可愛く笑ってるけどさ。
やっぱりそうなんだ!
だって否定しないもん!
「可愛く笑ってもダメ!」
うっかり誤魔化されそうになるけど、だまされないんだから!
「だってぇ、走るの好きじゃないしぃ」
語尾を伸ばして可愛こぶりっこな喋り方。
何度もぱちぱち瞬きして…この上目遣いは絶対わざとだ!
「もう!ずるいんだから!」
「えへへ、ないしょね?」
口の前でしーってしながら、また首をこてんと傾けて。
わざとぶりっこしてるって分かってても可愛い。
本当、ずるい。
それでも仕方ないかって思わせちゃうのがニノなんだよな。
要領もいいし。
俺はこうはなれないよなぁ。