第13章 体育祭
「翔ちゃんはふざけただけでも、俺は嬉しかったもん」
いや、ふざけたのは潤だけで、翔くんはふざけてないでしょ。
むしろ大真面目だと思うけどね。
そりゃ、なんで突然あんなこと…って疑問はあるけど。
ニノの可愛さに負けて、うっかり手が出ちゃったんじゃないかな。
「智だって嬉しかったでしょ?」
「………分かんない」
俺はただただ驚いて、ただただ恥ずかしくて。
ニノみたいに素直に嬉しいとは思えなかった。
なんだか拗ねたような気分になって口を尖らせる。
「びっくりしすぎて何にも分かんなかったもん」
手の熱さや唇の感触は妙に生々しく覚えてるけど…恥ずかしいからそれは言わない。
「智、可愛いー♡」
「可愛いのはニノでしょ」
分かんないって言ってるだけなのに、何故かぎゅうぎゅう抱き締められて。
とりあえずされるがままに任せる。
ニノとくっついてると安心する。
動揺して乱れた心も落ち着きを取り戻す。
「さっきね、翔ちゃんも王子さまみたいだったでしょ?俺、男なのにお姫さま気分味わっちゃった」
ニノが耳元で内緒話みたいに小さい声で打ち明けてくれたから
「……俺も」
恥ずかしいけど俺も同じだよって教えたら、ニノがまじまじと俺を見て。
「そっか…でも仕方ないよね。王子さまみたいにカッコいい翔ちゃんと潤くんが悪い。あんなの誰だって性別関係なくときめいちゃうよ」
真顔でしみじみ言うから、俺も深く頷いた。
「心臓に悪いからふざけてあんなことしないでほしいよ」
「えー、いいじゃん。ドキドキしようよ♡」
「やだよ、死んじゃう」
「死なないでしょ」
小声でひそひそ言い合って。
目を合わせて2人でクスクス笑った。