第13章 体育祭
ーOsideー
目の前の光景をポカーンと眺めてしまった。
それは俺だけじゃなくて、潤も、うっかり見てしまったクラスメイトたちも。
ニノと翔くんのイチャイチャなんて日常茶飯事だから、大抵のことはみんなスルーするようになってたけど。
これはさすがにスルー出来なかったみたい。
ニノの手をそっと掬い上げて指先にキスを落とした翔くん。
一連の動きは流れるように優雅で。
物語のワンシーンみたいだった。
誰も何も言えず、目を離すことも出来ず、黙って見守っている。
「約束の証」
翔くんがニノの手を離してイタズラっぽく笑ったところで、やっと教室にざわめきが戻ってきた。
「なんだ今の!?」
「本当に王子じゃん!」
みんな興奮気味に今の出来事を口にしてるけど。
真っ赤な顔でポーッと翔くんを見つめるニノは、溶けちゃいそうなくらいトロトロで、たぶん何も聞こえてない。
うるうるの瞳で見つめられてる翔くんは照れたようにはにかんでるけど、愛おしそうにニノを見つめ返していて。
たぶん翔くんも何も聞こえてないと思う。
ニノがあんまり可愛くて。
2人があまりにも幸せそうで。
「……いいな」
思わず心の呟きが声になって出てしまった。
小さな声だったはずのそれは、ざわめきに紛れず潤の耳に届いてしまったらしい。
潤の眉がピクリと動いた。
「羨ましいの?」
「へ?」
「智にもやってやろうか?」
何を言われたのか理解出来ないうちに、右手が捕まった。
そのまま持ち上げられた指先に潤の唇が落ちてくる。
あまりの出来事になんの反応も出来なかった。