第12章 文化祭
ーMsideー
「お前ら何してんの?」
「めちゃくちゃ目立ってるぞ」
聞き覚えのある声がしたと思ったら、人垣をかき分けるようにして滝沢や斗真たちが現れた。
まだくっついたままの翔たちを見ると呆れ顔になる。
「いや、本当に何してんの?」
聞かれた翔たちは揃ってキョトンとしている。
「何って?」
「いや…聞いた俺がバカだった」
見たら分かるだろと言わんばかりに真顔で聞き返された斗真は、ふるふると頭を振った。
「そっちこそどうしたの?」
翔が質問を返すと
「お前らがなんか揉めてるっぽいって聞いたから、心配して見に来たんだけど…」
「まさかとは思うけどケンカでもしてたのか?」
斗真たちは周りにまだいる同級生たちを見回した。
「ケンカではないな。こいつらが勝手にニノたちに近づいて怖がらせたから翔がキレただけ」
自分のことは棚上げして教えてやると
「ああ」
「なるほど」
それだけで大体の状況を把握したらしく、納得したようだ。
「俺の許可なく近づくから!」
翔はキレたことを否定もせず、ニノを抱き締めたまま再び堂々と言い放つ。
「いっそ清々しいまでの独占欲だな」
「許可取ろうとしたって絶対オッケー出さないだろ」
「当然!」
胸を張って答える翔にみんなは面白そうにケラケラ笑い出したが、俺は感心する気持ちの方が大きい。
いや、マジですごいって。
だって本当は俺もけっこう怒ってた。
見知らぬ男たちに突然囲まれた智が怯えたような顔をしてたから…
なに怖がらせてんだよって。
それでもニノを守ろうと庇う姿を見たら、智は俺が守りたいと思った。
まぁ単純にニヤケながら智に近づこうとするやつらに腹が立ったってのが一番だけど。