第12章 文化祭
翔ちゃんの発言を聞いた潤くんは、何故か脱力したみたいになった。
「お前、本当にすごいな…」
「何が?」
翔ちゃんを感心したように見てるけど、翔ちゃんは何を言われてるのか分からないみたいで首を傾げてる。
俺にも分からない。
今のの何がすごいのかな?
翔ちゃんのすごいところなんてたくさんあるから、どれを指してるのか分かんないよ。
「いや、なんでもない」
首を傾げた俺たちを少し呆れたように見ると、潤くんはあっさり発言を取り消した。
所在なさげにしてたみんなに向き直ると
「俺はそこまでは言わないけどさ。怖がらせるような行動はやめてくれよ」
明らかにさっきよりトーンダウンした口調で声を掛けた。
もう怒ってないのが分かってホッとしたような空気が流れる。
「ああ、もちろん」
「本当にごめんな」
改めて俺たちに謝ってくれるのが、なんだか申し訳ない。
「ううん、みんなは悪くないよ。俺もごめんね?」
翔ちゃんの腕から抜け出て、俺も謝ったら
「カズ!だから無闇に可愛さを振りまいちゃダメだってば!」
なんでか翔ちゃんに怒られた。
「可愛くないし、何も振りまいてないもん」
「カズは存在そのものが可愛いんだから気をつけて!」
「だからそんなこと言うの翔ちゃんだけだってば」
「あーもう、なんでそんなに無自覚なの?本当に心配だよ」
盛大に嘆きながら、もう一度俺を腕の中に閉じ込める。
俺からしたら、なんでそこまで心配するんだろ?って思うんだけど。
翔ちゃんが心配性なおかげでこうやってぎゅってしてもらえるんだもんね。
嬉しいから何も言わないで翔ちゃんの背中に腕をまわして抱きつき返す。
どうしてもにやけてしまう顔は翔ちゃんの胸に押し付けて隠した。