第12章 文化祭
本心では俺も翔と同じことを言いたい。
勝手に智に近づくなって。
でも言えないだろ普通。
少なくとも俺には真似できない。
だってまだ付き合ってないんだぜ。
恋人でもないのにこんな独占するみたいなこと…恋人だったとしても口に出来るか分からない。
でも言われたニノは、翔の腕の中で頰をピンクに染めながら、それはそれは幸せそうな顔をしていた。
みんながみんなニノみたいな反応をするわけじゃないのは分かってる。
うざがったり引いたりするやつもいるだろう。
でも自分の感情を素直に言葉にして、それが相手をこんな笑顔にできて。
やっぱりすごいよなぁ。
ほどなくして、後夜祭が始まった。
あの後もどんどん生徒が増え、一番後ろにいてもそこそこ混んでる。
ニノの両隣には守るように翔と智がガッチリ張り付いていて。
周りもクラスメイトが固まってるのもあって、さっきは青ざめてたニノも今は落ち着いてるみたいだ。
智と顔を寄せ合い何やらお喋りに夢中になってる。
バンドの爆音と周りの歓声とで、隣にいても何を話してるのか内容は全く聞こえないけど、2人が楽しそうに笑い合ってる姿に安心する。
翔も柔らかい微笑みを浮かべて優しく見守っていた。
後夜祭の最後は、一般投票の結果発表と表彰式。
なんとうちのクラスがぶっちぎりのトップだったらしい。
代表して滝沢が壇上に上がった。
高々と賞状と賞品の食券を掲げる滝沢を見て、智とニノは両手を繋いでキャーキャー言いながら飛び跳ねて喜んでる。
喜び方が女子だな。
……めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか。
ちょっと見惚れてしまっていたら
「潤!」
智が満面の笑顔で俺に手を伸ばすから、反射的にその手を掴んだ。
反対側ではニノと翔が手を繋いでいて。
そこにクラスメイトもどんどん加わって1つの大きな輪が出来て。
みんな笑顔で喜びを分かち合って。
大きな達成感に包まれて俺たちの文化祭は終わった。