第12章 文化祭
ーNsideー
ジリジリと迫って来る男たち。
後ろは壁で逃げることが出来ない。
ここは講堂で、人もたくさんいて。
智も翔ちゃんも潤くんもいる。
頭では分かってるのに、体が勝手に震える。
ただただ怖い。
こんな風に人に囲まれることなんて今までだってあったのに…この後がない追い詰められてる感じがダメなのかな…
理由を考えてみたりして、油断するとあの日の裏庭に飛んでしまいそうな意識を必死に今に繋ぎ止める。
大丈夫…
智が一緒だもん。
いつの間にか俺をかばうように前に立ってくれている智のシャツを握り締める。
大丈夫…
翔ちゃんと潤くんもすぐそこにいるもん。
大丈夫…大丈夫…
あんなことはもう起こらないよ。
大丈夫…大丈夫…
呪文みたいに何度も自分に言い聞かせていたら、急にふわりとあったかいものに包まれた。
無意識のうちに目をつぶってしまっていたみたいで、何も見えないけど分かる。
翔ちゃんだ…
翔ちゃんの腕の中…
一気に全身の力が抜けて、智のシャツをつかんでいた手がパタリと落ちた。
じわりと目の奥が熱くなる。
「…しょ…ちゃ……」
「カズ!」
掠れた小さな声しか出ない俺を、翔ちゃんが力強く抱き締め直してくれた。
力が強すぎて苦しいくらいなのに、すごく安心する。
「大丈夫だよ、カズ」
「…うん」
優しい翔ちゃんの声に体の震えがおさまるのが分かった。
もう、大丈夫だ。
翔ちゃんのあったかい腕と優しい声に何度助けられているんだろう。
全然進歩のない自分が情けなくなるけど、自分ではどうしようも出来なくて。
ごめんね、翔ちゃん。
でももう少しだけ、甘えさせて。