第12章 文化祭
「ほかは何かないの?ぷらぷらしただけ?」
「智の絵を見てきたよ」
ニノの質問に潤が嬉しそうに答える。
でも俺はその答えに、さっきの潤のまっすぐな視線を思い出してしまって何も言えなくなった。
ただでさえ目力強いのに、あんなまっすぐ見つめられてさ。
しかも“大好き”って…あんな真剣な声で…
思い出すだけで顔が熱くなる。
俺の絵のことだって分かってる。
分かってるのに、勘違いしたくなった。
絵じゃなくて、俺のこと…なんじゃないかって…
そんなことあるわけないのに。
「また?昨日も見たって言ってなかった?潤くん本当に智の絵が好きなんだねぇ」
「好きだよ!悪いかよ!」
「ううん、ぜーんぜん♡」
わざとらしいニノの呆れ声に潤は気付かず食ってかかって。
もう!ニノに誘導されてるじゃん!
簡単に引っかかんないでよ!
ニノがチラリと俺を見る。
嬉しそうな顔しちゃってるけどさ。
潤の口からまた飛び出した“好き”って言葉のせいで、俺はそれどころじゃないから。
「俺も大好きだもん♡♡♡」
ドキドキして固まってしまった俺にニノがぎゅうっと抱きついてきた。
潤に言われたら心臓が壊れそうになる言葉でも、ニノに言われると何だかホッとする。
ニノは俺にぴったりくっつくと
「あんなはっきり好きって言ってもらえるなんていいな♡俺までちょっとキュンとしちゃった♡」
潤たちには聞こえないくらい小さい声で、俺の耳元でひそひそ囁く。
「そんなの、俺の絵のことだもん」
俺も小さな声で反論したけど、我ながら拗ねたような色の混じった声で呆れてしまう。
「拗ねてるー♡智、耳まで真っ赤だよ♡可愛い♡」
「可愛くなんかない」
「可愛いよ♡」
クスクス笑いながらからかわれて悔しい。
でもニノとくっついて喋ってたら気持ちは落ち着いた。