第12章 文化祭
「そんなことあるだろ。少なくとも俺は何度見ても感動するし、ずっと見ていたいと思うよ」
そう思うのは絶対俺だけじゃないけど。
だって、まさに今。
俺たちの目の前に智の絵に心奪われている人がこれだけいるんだから。
「そんなに俺の絵が好きなの?」
照れ隠しか、智はちょっとからかうような口調でそんなことを言うけど
「大好きだよ」
俺はその目をじっと見て、真剣に答えた。
絵だけじゃないよ。
智のことが大好きなんだ。
口に出せない想いは心の中だけで呟く。
言葉にしては伝えられないけれど、見つめる視線から気持ちが伝わればいいのにと思ってしまう。
そのまま視線を逸らさずにいたら、みるみる智の顔が赤く染まっていった。
首まで真っ赤になって俯く姿に、少しは伝わったのかもしれないと嬉しくなる。
「大好きだから毎日見たいよ」
「夏休みは毎日見てたじゃん///」
恥ずかしそうにポソポソ喋る智が愛おしい。
「これからも見ていたい…また美術室に行っていい?」
「………いいよ///」
小さな声だったけど、許諾の言葉はしっかり聞こえた。
「ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
お礼を伝えれば、智も赤い顔ではにかんでお礼を返してくれて。
「え?」
「潤に好きだって言ってもらえてすごく嬉しい。ありがとう」
素直な言葉と一緒に溢れた笑顔は本当に嬉しそうだった。
俺の言葉でそんな笑顔を見せてくれたことがすごく幸せで。
さっきまでの不機嫌はあっという間にどこかへ吹き飛んで消えていた。