第12章 文化祭
はぁ…
心を落ち着かせるために、小さく深呼吸する。
昨日さんざん嘆いていた翔の気持ちが分かるな。
いちいち、いかにニノが可愛いかの説明が入るから、またノロケかと思って適当にあしらっちゃったけどさ。
翔はこの状況があの山盛りの食料分続いたんだもんな…そりゃ愚痴りたくもなるだろう。
あいつよくブチ切れずに耐えたな。
えらいわ。
もうちょっと優しくしてやれば良かったかもしれないな。
「智は行きたいとこないの?」
「特にないんだよねぇ。潤は?」
気を取り直して智に尋ねると、逆に聞き返された。
「俺は智の絵を見に行きたい」
俺の答えは決まっていて。
「えぇ…昨日見たからもういいじゃん…」
智は少し嫌そうに渋ったけれど、他に見たいものがないならばと何とか宥めて、美術部の展示へ向かった。
智の絵の前には今日も人だかりが出来ていて。
人が途絶えることなく、後から後からやってくる。
「今日も大盛況だな」
みんなキラキラした瞳で智の絵に見入っている。
俺ももちろん智の絵が見たかったんだけれど。
この智の絵に心を奪われている人たち…
たぶん俺と同じ気持ちを抱いているだろう人たちの姿にも感動してしまう。
「智の絵にはこれだけ大勢を引きつける力があるんだな。これだけの人の心をつかめるなんて本当にすごいよ」
心からの尊敬を込めて伝えると
「そんなことないよ」
智はちょっと困ったような顔をした。
耳が赤いから恥ずかしがってるのかもしれない。