第12章 文化祭
「おい、潤!…あ、大野くんも一緒じゃん!ちょっと寄ってってよ」
「松本!…お、隣は大野くんか?良かったら食ってけよ!」
校内をプラプラ歩いてると、ちょいちょい声を掛けられる。
「松本先輩!ご無沙汰してます!」
「おー、久しぶり」
その度に足を止めて、少し喋ったり、展示を覗いたり。
普段そんなに顔を合わさない先輩や後輩と会えて話せるのは楽しいっちゃ楽しい。
けど、どいつもこいつも俺と話しながらもチラチラ智を見ていて。
明らかにデレた視線にイライラが募る。
たぶん初めて間近で見る智の可愛さに目を離せないんだろうけど。
俺の智をそんな目で見てんじゃねーよ!
…って言えたらどんなにスッキリするだろう。
もちろんそんなこと言えないから腹の中で思うだけだ。
智はそんな視線にも俺の苛つきにも気付いた様子はなく、何も言わずニコニコしながら付き合ってくれてる。
「なんかごめんな」
俺に付き合わせてばかりでちょっと申し訳ない気がして謝ったら
「え?何が?」
智はキョトンとした。
「いや、なんかあっちこっちで足止めされてるからさ。智つまんないかなって…」
「そんなことないよ。楽しいから大丈夫」
ふにゃっと笑う智は今日も可愛い。
「潤も人気者だよね」
「全然そんなことねーよ」
「あるでしょ。潤のおかげで俺までもらっちゃった」
ラッキーって笑って、さっき先輩にもらったリンゴ飴を見せる。
リンゴ飴似合うな。
真っ赤なリンゴ飴をかじる姿がめっちゃ可愛い。
でも、デレデレしながら智にリンゴ飴を渡してた先輩を思い出すと、またムカムカしてくる。
あの野郎、偶然を装って智の手に触ってたし…先輩じゃなかったら、その手をはたいてたかもしれない。