第12章 文化祭
「あれでいいわけ?」
「ま、仕方ない。翔を一番うまく使えるのはニノだしな」
つい確認したら、滝沢は苦笑いで答える。
「裏方で翔1人に任せられることなんてないだろ?」
「ま、ないだろうな」
不器用な翔が下手に動けば、余計な仕事が増えるだけだろう。
さすが付き合いの長い滝沢はよく分かってる。
「表に出したら、客は増えるけどトラブルも増えるし、ニノが泣くし。ニノが泣けば他のやつらまで沈むし…」
滝沢が大袈裟にため息を吐いてみせる。
「本当に困ったやつらだよ」
それでも呆れた口調とは裏腹に、その目は優しい。
「翔ちゃん、これ混ぜてね♡」
「任せて」
「上手上手♡」
ハートを撒き散らす2人をクラスメイトたちも生温い目で見守ってる。
「もう空気が甘すぎてお腹いっぱい」
「でも、やっぱりニノには笑っててほしいよ」
「そこに可愛い笑顔があるだけで全然違うよな」
ニノはクラスメイトにも愛されてるな。
っつーか、みんな甘い。
ま、あの調子なら今日は大丈夫だろう。
「智、行こうぜ」
翔と並んでニノを甘やかす筆頭の智の肩を叩くと
「うん、行こっか」
ニコニコとニノを見つめたまま頷いた。
「ニノー!また後でね」
「…智?」
智が声を掛けると、ニノはキョロキョロと智を探す仕草をした。
俺たちがいることに全く気付いてなかったのかよ…
「いってらっしゃい!楽しんできて♡」
やっと智を見つけると、ニノはにっこり笑って手を振った。
隣でデレた翔も手を振ってくれた。