第12章 文化祭
「メイドしてるときもさ、ずっと女の子にキャーキャー言われてて…翔ちゃんが少し遠く感じちゃった」
さみしそうな笑顔を浮かべるニノ。
「ヤキモチ妬いちゃったの?」
「ヤキモチも妬いた」
なんか微妙に違う気もしたんだけど、聞いてみたら素直な答えが返ってきた。
「“ヤキモチも”って、ほかに何があるの?」
「こんなすごい人の隣にいるのが俺なんかでいいのかなって…不安になっちゃった…」
急に卑屈なことを言い出すから驚いてしまう。
「なんでそんなこと…」
「だって、今日会った人みんな俺のことじっと見てきたんだもん…なんでこんなやつが翔ちゃんと一緒にいるんだって思ってたんじゃないかな…」
えー?そんなこと誰も思わないでしょ。
それってさ…
「みんながカズのこと見てたのはね、カズが可愛いからだよ」
まさに俺が言おうとしたことを、静かに近くまで戻ってきてたらしい翔くんが口にした。
「翔ちゃん!?」
急に現れたからニノがものすごくびっくりしてるけど、俺も驚いた。
どこから聞いてたんだろ。
「カズがものすごく可愛いからみんな見てたんだし、カズの気を惹きたくてこんなに色々くれたんだよ?」
「そんなの…」
「カズはもうちょっと自分の可愛さを自覚して?今日だってカズが可愛い笑顔を振り撒くから、俺みんながカズのこと好きになっちゃうんじゃないかって心配で心配で…」
なんかグチグチ嘆き出した翔くんに、ニノが真っ赤になった。
「そんなことあるわけないじゃん!」
「そんなことあるの!カズはめちゃくちゃ可愛いんだから!」
「モテるのは翔ちゃんでしょ!みんな翔ちゃんのこと好きだからこんなに色々くれたんでしょ!」
「違うって!これはカズに…」
突然始まった言い争いに口を挟むことも出来ずポカンと眺めてしまった。