第12章 文化祭
「本当に何もなかったから…」
ニノを安心させてあげたいのに、うまい言葉が出ないでいたら
「大丈夫、翔なんかより智のがよっぽど客のあしらいがうまかったよ」
「おいっ!俺なんかって言うな!」
話を聞いてた潤が横からフォローしてくれた。
「手出そうとしたやつもいたけど、逆に智にやり込められてたしね」
「そっか」
翔くんの突っ込みを無視して潤が続けると、ニノがホッとしたように息を吐いた。
「智すごいね!やっぱり強い!」
笑顔を見せてくれたから、俺もホッとした。
「俺だってさ…」
「そういえば飲み物がないな、買いに行くか」
「聞けよ!」
翔くんがぶちぶち言ってたけど、潤はサクッと無視して。
なんだかんだ言いながら結局翔くんも一緒に買いに行ってくれた。
2人がいないうちにと思って
「文化祭デートは楽しかった?」
「うん♡すっごく楽しかった♡」
半分からかうつもりで聞いてみたら、満面の笑顔が返ってきた。
幸せそうな可愛い笑顔にからかうのも忘れて俺まで嬉しくなってしまう。
「でもね…」
でもその笑顔はすぐに陰ってしまう。
「…翔ちゃんて本当に人気者なんだなって…改めて実感したっていうか…」
「ニノ?」
声のトーンも少し下がって、心配になる。
「ちょっと歩くとすぐ声掛けられて。学校内に翔ちゃんのこと知らない人なんていないんだろうなって、それくらい有名人なんだなって……そんなの知ってたけど、改めて現実を突き付けられたっていうか」
「うん」
ニノはどこか悲しそうな目で机の上を見る。
「これだって全部翔ちゃんの知り合いからもらったの。みんな翔ちゃんのこと好きなんだと思う」
「そんなこと…」
ない、とは言えないか。
だって翔くんがモテるのは事実だから。
でも翔くんはこれ全部ニノへの貢ぎ物だって言ってなかった?
どっちが本当か、一緒に居たわけじゃないから分からないけど、ニノといると食べ物をよくもらう気がするから。
もしかしたら翔くんが正しいんじゃないかなぁ。