第12章 文化祭
「智の絵、大人気だったね〜♡」
制服に着替えて、化粧も落として。
スッキリしてから、最初に美術部を見に行った。
カズの言う通り智くんの絵の前には常に人だかりが出来ていた。
夏休みに描いていたディズニーの絵。
それを見たカズは本当に嬉しそうで、誇らしそうで。
「あの絵すごく綺麗だもんね。あんなにたくさんの人に見てもらえて、たくさん褒められてて、俺が嬉しくなっちゃった♡」
まるで自分のことのように喜ぶ姿に、こんな風に想ってもらえる智くんがやっぱり羨ましいと思った。
俺もカズにとってそんな存在になりたい。
「次はバスケ部行く?」
「うん、でも後でもいいよ?翔ちゃんはどこ行きたい?」
「後輩たちが来てくれってうるさかったから、中学サッカー部は顔出しに行こうかな。いい?」
「もちろん」
「じゃあ適当にあちこち覗きながら、その2つに向かおうか」
「うん♪」
今回は俺にしては珍しく何も計画は立てていない。
カズと2人、お祭りの空気を楽しみながらのんびり歩くだけでも楽しいかな、なんて思ったんだけど。
「翔ちゃん、縁日だって!行ってみようよ♪」
「いいよ」
カズもはしゃいでるみたいで、キョロキョロして気になるものを見つけると目を輝かせて。
無邪気に笑いながら俺の手を引っ張る姿が可愛い。
「翔ちゃん、あれ!あれ取って!」
「よーし、任せて」
「あーっ、おしい!」
輪投げ1つで大騒ぎしたり
「ああ…ダメだ…」
「翔ちゃん諦めるの早いよー。ほらっ」
「カズすごい!」
ヨーヨー釣りでカズだけが上手に釣り上げたり
「綿あめ、甘ーい!」
「なんか懐かしいね」
「はい、あーん♡」
「あーん…甘っ!」
綿あめを半分こしたり。
何をしても楽しい。
想像していたより何十倍も楽しい。