第12章 文化祭
カズを抱き締めたまま、心からの謝罪を口にする。
「ごめんね。ちゃんと断ってきたから、約束通り俺と一緒にまわってくれる?」
「…俺でいいの?」
「カズがいいんだよ…俺はカズとまわりたい。カズとじゃなきゃ嫌だ…」
まだ不安そうなカズに向けて言葉を重ねる。
「不安にさせて本当にごめん」
カズが信じてくれるまで何度だって謝るから。
「お願いだから、俺と一緒にまわって?」
懇願すると、カズの表情が少し柔らかくなった。
「…うん…翔ちゃんが、俺でいいなら…」
「俺はカズがいい」
はっきり言い切ったら
「…うん///俺も翔ちゃんとまわりたい///」
やっとカズが笑顔を見せてくれて、心からホッとした。
「良かった!よし行こう!すぐ行こう!」
カズの気が変わらないうちにと、すぐにその手を引いて歩き出そうとしたら
「待って、翔ちゃん!」
逆にぐっとカズに引っ張られて。
もしかしてやっぱり嫌なのかと思ったら、不安がそのまま表情に表れたらしい。
「ぷっ…翔ちゃん、そんな顔しないでよ」
よほど情けない顔だったのかカズがクスクス笑い出す。
「そのまま行くの?翔ちゃんが着替えたくないなら俺は別にいいけど」
カズに指摘されて、自分がまだメイド姿のままだったことを思い出した。
「忘れてた!このままなんてやだよ!すぐ着替えるから待ってて!」
「焦らなくていいよ。着替え手伝ってあげるね。でも美人さんだからそのままでもいいのに〜」
「勘弁してよ」
クスクス笑いながらそんな軽口をたたくカズに、内心ますます安心しながら、ひとまず着替えに向かった。