第12章 文化祭
ーSsideー
「翔ちゃん何から見に行く?」
「カズは何が見たい?」
「うーんとね、智の絵が飾ってあるらしいから美術部とー、雅紀がうるさかったからバスケ部の屋台とー…」
ニコニコとパンフレットを見るカズが可愛い。
こんな可愛いカズを危うく1人でこの人混みの中に放り出すところだったんだ。
考えただけでゾッとする。
本当にみんなに感謝しないとだ。
潤に怒られた後、急いで裏に戻ったらカズは智くんの腕の中にいた。
潤の言う通り、カズを引き留めてくれていたんだろう。
「カズ!ごめん!遅くなってごめん!本当にごめん!」
慌てて駆け寄ると、智くんにすごい目で睨まれた。
怖っ!!
でもカズが不安げに瞳を潤ませながら俺を見てる。
今は智くんに怯んでる場合じゃない。
カズに手を伸ばしたら、智くんは仕方ないなって顔して、そっとカズを俺に引き渡してくれた。
そのまま表に出て行こうとするから
「ありがとう、智くん!」
カズをしっかり抱き締めながら、その後ろ姿にお礼を伝えたら、顔だけ振り向いてキッと見つめられた。
その目がしっかりしろよと言ってるみたいで。
背筋をシャンと伸ばして、ちゃんとその目を見て頷いた。
智くんは俺の目を確認するように見た後、少しだけ笑顔を見せてくれて、小さく手を振ってから出て行った。
カズは俺の腕の中でじっと身を固くしている。
「カズ…」
「女の子たちはいいの?」
カズの口から零れた小さな呟きも不安そうで。
俺がはっきりした態度を取らなかったせいで、カズじゃなく女の子を選ぶかもと思わせてしまったんだろうか。
「待たせてごめん…本当にごめんね」
申し訳なさで胸が苦しくなった。