第12章 文化祭
「ニノどう?」
「ずっと泣きそうだったけど、少し落ち着いてきてたし。翔くんが土下座する勢いで謝り倒してたよ」
翔が行ったから大丈夫だとは思ったけど、一応確認すると、智は面白そうにクスクス笑った。
口元に手を当てて笑う姿も、メイドなもんだから可愛さが半端ない。
破壊力抜群の笑顔に、話の内容がうまく入ってこない。
「あれならもう大丈夫なんじゃないかな。潤が翔くんを怒ってくれたんでしょ?」
「…あ?…ああ…まぁな…」
「ありがとね。ふふ、あのままニノを泣かせたら俺がぶっ飛ばしてやろうと思ってたんだけどね」
めちゃくちゃ可愛い顔で笑ってるのに、言ってることは物騒だ。
しかも智は本気だろう。
やっぱ怖え!
智は怒らせたくねーな。
…ま、ニノ絡み以外でキレてるとこ見たことないけど。
「ラブラブデートを楽しんでくれたらいいな」
「そうだな」
ひとまず智も機嫌が良さそうで、なんだかホッとした。
「さ、働くか!」
「はーい」
午前中、俺たちの予想を遥かに超える客が押し寄せたらしいカフェは、滝沢によって時間制限が設けられていた。
確かに廊下にはかなり長い行列が出来てたし、行列整理係も作られていた。
混乱を避けるためにはすごくいいと思うんだが。
短時間で客がどんどん入れ替わるから結構な忙しさだ。
注文取って、運んで、片付けて。
その上どうでもいいようなことで、何度も呼ばれたり、話し掛けられたり。
面倒くせーことこの上ない。
でもそれは俺だけに限らず智もで。
俺には女性客が寄ってくるが、智には男性客が群がっている。
正直かなり面白くなかったが、意外にも智はうまいことやり過ごしていた。