第12章 文化祭
「たすけて!斗真がイジワルする」
「意地悪じゃねーわ!ニノが翔を待たずに1人で出ようとしてんのを止めてんの!」
「ああ、そりゃニノが悪い。約束してんだから待ってやれよ」
2人に斗真を何とかしてもらおうと思ったのに、潤くんは斗真の味方だった。
「…だって…翔ちゃんが…」
言い返そうとしたのに、じわりと涙がこみ上げてきて、それ以上話せなくなる。
すぐに気付いた智がぎゅっと抱き締めてくれた。
智と入れ替わるように斗真が離れていって
「潤、ちょっと」
「ああ。智、そのままニノ捕まえとけよ」
潤くんと一緒にカフェの方へ出て行った。
潤くんはしっかり智に釘を刺していく。
なんでみんなしてイジワルするんだろ。
ここで翔ちゃん待ってて、やっぱり女の子とまわることにしたからって言われたら、どうしてくれんの?
俺の心折れちゃうよ?
「ニノ、どうしたの?」
「………」
智に聞かれても答えたくなくて。
「ニノ?俺に教えて?」
でも優しく優しく促してくれるから
「…翔ちゃん…女の子たちにずっとキャーキャー言われてて… 女の子にベタベタされてるの見たくない…って思っちゃって…」
ぽつりぽつりと心の中のモヤモヤを吐き出していく。
口にしたらよく分かる。
こんなのただの俺のワガママだ。
「…女の子たちに、一緒にまわろって誘われても断らないし…やっぱり…俺とじゃなくて、女の子とまわるって…言われたらどうしよって…こわくて…」
智は黙って聞きながら、ずっと俺の背中を撫でてくれてた。
「大丈夫、翔くんはニノとまわりたいって思ってるよ。ただちょっとヘタ……優しいから、すぐ断れなかっただけ」
「そうかな?」
「そうだよ」
智が断言してくれると、信じられるから不思議だ。
「これでニノじゃなくて女の子を選んだら俺が翔くんのことぶっ飛ばしてあげるからね」
「ふふっ、智ったら」
珍しく智が冗談を言うから笑ってしまった。
笑ったら少し心が軽くなった。