第12章 文化祭
「大丈…」
大丈夫だよって言おうとしたけど
「翔は相変わらずモテるな」
「女装しても変わらないっていうか、むしろ人気が増してるのがすげえ」
「可愛い子から美人までよりどりみどりじゃん」
さっきの俺と同じようにカフェを覗いてるやつらの会話が聞こえてきて。
ますます心が沈んで、その先を続けられなかった。
そしたら何故か斗真がそいつらのところへ飛んで行って
「お前ら!ばか!」
小声で怒鳴りながら頭をはたいた。
そのまま斗真が俺を見ると、つられたようにそいつらも俺を見て、ハッとした顔になった。
へ?なに?
「ごめん、ニノ!」
パンっと手を合わせながら謝られて、ますます意味が分からない。
「なに?なんで俺に謝るの?俺なにもされてないよ?」
「いや、俺たち変なこと言っちゃって…聞いて嫌な気分になったろ?ごめんな」
変なことって翔ちゃんのこと?
確かに気持ちはどんよりしてるけど、別にみんなは悪くない。
「みんな本当のこと話してただけじゃん。翔ちゃんがモテるのも、女の子たちが可愛いのも本当だもん。謝ることじゃ…」
「いやいやいや!」
なんで俺が謝られるのか分からないのに、途中で遮られたと思ったら
「大丈夫!あんな女子たちよりニノの方が可愛いから!」
「翔はよそ見なんてしないから!」
なんか慰められた。
何なの?
言ってる意味が分からないんだけど。
よそ見って何?
翔ちゃんは何からよそを見るの?
そもそも俺なんかより女子の方が可愛いに決まってる。
俺、男だよ?
女子より可愛いわけないでしょ。
もしかして、俺が翔ちゃんのこと好きってみんなにもバレてるのかな?
それって恥ずかしくない?
…っていうかみんな引かないの?
分かんないけど、みんなの態度はごく普通だし。
むしろ優しいし。
男子校だから、同性同士の恋愛にも寛容なのかな。