第12章 文化祭
もしかして、さっきからカフェの方から聞こえて来る黄色い声も全部翔ちゃんに向けられたものなのかな?
どうしても気になって。
こっそり仕切りのカーテンの隙間からカフェの方を覗いてみたら、そこには可愛い女の子たちの熱い視線を一身に浴びる翔ちゃんがいた。
翔ちゃんが何か話すたび、少し動くたびに、悲鳴みたいな歓声が上がってる。
王子さまが女装するなんて、女の子は引くんじゃないかなってちょっと思ってたんだけど、むしろめちゃくちゃ喜んでるみたい。
そうだよね…
王子さまは女装したって美人でカッコいいもん。
すごい美人さんだから男子の客からもたくさん声を掛けられてる…もともと校内でも人気者だもんね。
翔ちゃんは困ったような雰囲気は出してるけど、ちゃんと笑顔で応対してて。
今度は胸がチクチクした。
翔ちゃんがモテるのなんて知ってたもん。
あんなカッコよくて優しくて頭良くて非の打ちどころのない人がモテないわけないんだから。
翔ちゃんがモテるのなんて、もう当たり前すぎるくらい当たり前なんだから。
分かってるけど。
それでも…こうやって目の当たりにするのは、やっぱりキツイ。
でも翔ちゃんは俺のじゃないから。
俺にはこの状況をヤダって言う権利なんかないんだ。
見なきゃよかったな。
後悔しても遅い。
後で悔いるから後悔って言うんだ。
漢字の意味をしみじみと実感したりして。
なんだか泣きたい気分になってトボトボと持ち場に戻ったら
「ニノ大丈夫か?」
斗真に心配そうに声を掛けられた。
「なにが?」
「お前、泣きそうな顔してるぞ?」
俺、そんな情けない顔してんのか…