第1章 恋に落ちる
あれから1ヶ月
俺は今日も彼、二宮くんを見ている。
窓際で大野くんと外を見ながら何か喋っている二宮くんは、今日もとても可愛い。
二宮くんは近くの公立中学出身で、同じ学校だった大野智くんと相葉雅紀くんと仲が良い。
相葉くんは隣のクラスで、入学式の日に大声出してた彼だ。
二宮くんがこの2人以外と喋っているところはあまり見ない。
大野くんも二宮くんと同じくらいの背格好で可愛らしい顔をしている。
可愛い2人がじゃれ合う様子は、まるで子猫たちみたいで見ていて微笑ましい。
今も2人で肩を寄せ合って、空を指差しながらクスクス笑ってる。
なに話してんのかな
俺もあの笑顔を間近で見たいな
···なんて。
最もそう思っているのは俺だけではない。
こっそり2人のやり取りを見守っているやつは1人2人じゃない。
もともと人数の少ない外部生は目立つ。
その中でも、可愛らしい容姿の2人は既に校内で有名人になっていた。
男子校だからか可愛い容姿をしているとチヤホヤされる。
女子がいないから、みんな女子代わりの存在を求めるのだろうか。
大抵のやつは見て楽しんでるだけだが、中には本気になるやつもいる。
···俺みたいに。
まぁ、本気かどうかはさておき、みんな可愛い2人と仲良くなりたいと思っている。
俺だって仲良くなりたい。
でも2人ともおとなしい性格のようで、あまり積極的に周りと関わろうとしない。
確かにもう既に人間関係が出来上がっている中に入っていくのは難しいだろうと思う。
他の外部生たちも、外部生同士で固まっていることが多い。
そんな外部生の中でも、いつも教室の隅で寄り添うようにしている2人には、何となく声を掛けにくい雰囲気があって。
1ヶ月経っても俺の恋には何の進展もない。
進展どころかまともに話したことすらない。
せいぜい挨拶が精一杯。
他のやつらは何かと理由を見つけては話し掛けたりしているのに。
生徒会長をしていた時、全校生徒の前で話をする時も緊張したことなんて一度もなかった。
それなのに、たった1人のクラスメイトに話し掛けることすら出来ないなんて。
思っていた以上の自分のヘタレっぷりに情けなくなる。
心の中で盛大にため息を吐いた。