第1章 恋に落ちる
他に誰が同じクラスか確認していたら
「えぇーーーっ!!」
突然バカみたいに大きな声が聞こえて、思わずそちらを振り向いた。
周りのやつらも一斉にそちらを向く。
視線の先にいたのは3人組。
見たことのない顔だから外部生だと分かる。
大きな声を上げたのは、3人のうち一番背の高い爽やかなイケメンだった。
「バカ!声でかいって!」
向けられた視線に居心地悪そうにしながら、隣にいた小柄な少年が大声を出したやつに呆れ顔で注意している。
その彼の顔を見た瞬間
俺の世界から全ての音が消えた。
榛色の瞳、赤い唇、透けるように白い肌
その綺麗な横顔から目が離せない。
まだ隣の友人と何か言い合っているようだが、音が耳に入って来ない。
食い入るように見つめていたら、ふいにもう1人の友人に何か話しかけられて、彼が笑った。
まるで花が咲いたかのような可憐な笑顔に、心臓がわしづかみにされた気がした。
息も出来なかった。
一瞬で、恋に落ちた。
正直、今の今まで一目惚れなんて信じていなかった。
恋というものは、相手をよく知ってからするものだと思っていて。
その相手は当然女の子だと思っていた。
それが、名前も性格も何も知らない···
たった今、顔を見ただけの相手に···
それも男相手に···
俺が恋をするなんて。
夢にも思わなかった。
それでも自分の胸に芽生えた気持ちを否定することは出来なくて。
その日は1日頭がフワフワしていて、夢でも見ているような気分で過ごした。
正直なところ記憶も曖昧で。
中学で生徒会長をしていた俺は、新入生代表の挨拶をしたはずだけれど。
ちゃんと出来たのかすら覚えていない。
はっきり覚えているのは
同じクラスに彼の姿を見付けた時に心の中で大きくガッツポーズをしたこと
自己紹介で知った『二宮和也』という彼の名前
それと、彼の花のような笑顔
それだけだった。