第12章 文化祭
「チッ、あいつら…」
「えっ?なに?」
小さすぎてよく聞こえなかったんだけど…
翔ちゃん…今、舌打ちした…?
びっくりして聞き返したら
「え?どうかした?」
翔ちゃんはいつも通り穏やかな笑顔で。
なんだ、聞き間違えだ。
そうだよね、翔ちゃんが舌打ちなんてするわけないよね。
「みんなと仲良くなれたんだね」
「うん。なんかね、やっとちゃんと友だちになれたみたいで嬉しいんだ」
「良かったね」
優しく頭を撫でてくれる翔ちゃん。
「へへ、ありがと」
翔ちゃんが一緒に喜んでくれるのが嬉しかった。
「さ、早く写真撮ろ♡」
「え〜、本当に撮るの?」
本来の目的を果たすべくスマホを構えると、翔ちゃんの眉が八の字になったけど、気づかないフリしちゃうもんね。
「撮るの♡はい!そこ立って!」
翔ちゃん1人の写真をカフェの色んな場所で撮って、最後はクラスメイトに頼んでツーショットも撮ってもらった。
大満足♡
待ち受けにしちゃおうかな♡
「ありがと、翔ちゃん♡」
「どういたしまして…」
俺はルンルンだったけど、ふと見れば翔ちゃんはちょっとゲッソリした顔してて。
なんだか急に申し訳ない気持ちになる。
「疲れちゃった?ワガママ言ってごめんね…」
これから働かなきゃ行けないのに、先に疲れさせちゃった。
写真なんて終わった後にすれば良かったな。
「ちょっと恥ずかしかっただけだから大丈夫。こんなのワガママだなんて思わないよ」
ションボリ反省してたら、翔ちゃんはにっこり笑ってくれた。
優しいな、翔ちゃん。
「もうすぐ開場だね。頑張ろうね」
「うん、頑張ろうね」
時計を確認した翔ちゃんが手を差し出すから、ぱちんとハイタッチして。
気を引き締めて裏に戻った。