第12章 文化祭
放課後は毎日文化祭の準備。
みんなで買い出しに行って、作れるものからどんどん作っていってるんだけど。
なんかみんなに色々聞かれるから、俺が指示しなきゃいけなくて…
人の前に立つのとか指示するのとか本当に苦手なんだけど、潤や翔くんがフォローしてくれるから一応なんとかなってる。
中学の時は文化祭とかやる気なくて、最低限の義務だけ果たした感じだった。俺もニノも。
だから、最初からこんなにガッツリ関わって、みんなで作り上げていく…みたいな経験は初めてで。
戸惑うことも多いけど、すごく楽しい。
みんなに指示を出しつつ、俺はポスターとか看板とかメニュー表とかを描いてて。
描き始めるとどうしても自分の世界に入っちゃって周りが見えなくなったりしちゃうけど。
そういうのも、みんな分かってくれてるし、潤たちがフォローしてくれる。
今もせっせとポスターを描いてたんだけど、甘ーい良い匂いが漂ってきて筆が止まった。
少しすると、パタパタという足音と一緒に
「翔ちゃーん♡」
お皿を持ったニノがやってきた。
「今日はワッフルだよ♡はい、あーん♡」
「あーん♡うまっ!」
今日も安定のラブラブで、ニノが翔くんに試作を食べさせてあげてる。
「翔ちゃん、口のとこクリームついてるよ?」
「どこ?取れた?」
「ここ♡」
違う場所を擦ってばっかで全然取れない翔くんの代わりにニノが拭ってあげて。
「ありがとう///」
「どういたしまして♡」
とにかく空気が甘ったるいんだけど、でもまぁ今に始まったことじゃないか。
こんなやり取りも日課になってるから、もう誰も何も言わないし、気にも止めない。
当たり前の光景として受け入れられてる。
潤も完全スルーだからツッコミも入らない。
ニノは試作チームの中心で頑張ってて。
学校行事でこんな張り切ってるニノなんて初めて見た。
きっとニノも俺と一緒なんだろうな。
だってすごく楽しそうだもん。
もちろん翔くんの存在が大きいんだとは思うけど。
でもきっとそれだけじゃない。
中学生の俺たちは色々損してたかもしれないね。