第12章 文化祭
「それより、これめちゃくちゃうまいね!」
「本当?」
翔くんはニノの気持ちを逸らせようとしたのか話を元に戻す。
ストレートな褒め言葉にニノはパッと顔を輝かせた。
「良かったー♡定番じゃつまらないかなって思ってね、これはミニトマトとバジルソースとチーズだよ」
説明を聞いて思わず潤と顔を見合わせる。
「ミニトマトか…そりゃ熱いだろうよ」
「組み合わせ的には絶対美味しいけどね…」
熱々のミニトマトとかちっちゃい爆弾じゃん!
「あ、智と潤くんもどうぞ♡」
最初に翔くんに食べてもらうって約束を果たしたら、ニノがやっと俺たちの方を向いた。
「はい、智もあーん♡」
ニノがにこにこしながら俺の口元にも差し出してくれるけど、さっきの翔くんを見てるから口に入れるのを躊躇ってしまう。
もう冷めたの?
ミニトマトなんでしょ?まだ熱いんじゃない?
「智は食べてくれないの?」
俺がなかなか口を開けずにいたら、ニノの眉が悲しそうにどんどんハの字になっていく。
ああ〜、そんな捨てられた子犬みたいな顔しないでよ。
俺、この顔に弱いんだよ。
「智?」
うるうるの瞳に負けて覚悟を決める。
「いただきます!」
思い切ってかじったけど、やっぱり口の中でミニトマトが爆発した。
「あっっっち!」
「え?!ごめん!まだ熱かった?…でも翔ちゃんは大丈夫って言ってたのに?」
慌てて口を押さえる俺を見て、ニノが一応謝ってくれつつ不思議そうに首を傾げる。
いや、これ相当熱いよ。
ベロやけどしたもん!
翔くんかなり我慢したんじゃない?
翔くんを見ると、何だか申し訳なさそうな顔をされた。
別に翔くんが悪いわけじゃないからいいのに。
やせ我慢したのだって、ニノのためだもんね。
「食べた場所によるのかな…」
翔くんが気にしないように誤魔化してみるけど、涙目は隠せなかった。