第12章 文化祭
戻ったら智は何かを一心不乱に描いていた。
たぶん一連のドタバタにも気づいてないだろう。
翔がいなくなったことで、裏方チームの話し合いは再開したようだが、こちらはどうしたもんかと思っていたら
「出来た」
智が手を止めて顔を上げた。
「走り書きでごめんだけど、こんなのどうかな?」
智がさっきまで描いてた紙を差し出してくるから、全員で覗き込む。
そこには内装のアイディアが色々描き込まれていて。
鉛筆でさっとラフに描かれただけなのに、これだけの絵でも人を惹きつける。
「すげぇ…」
誰かが思わずと言った感じで呟いたが、たぶん全員同じ気持ちだろう。
まだ拗ねたようにぶちぶち言ってた翔も静かになった。
「口だけで説明できる自信なくて、とりあえず絵にしてみたんだけど…分かる?」
「分かるよ!」
「いや、本当にすげぇ!」
智は自信なさげだけど、周りは興奮を隠せない。
「予算もあるから全部は厳しいかもだけど、なるべくこの智くんのアイディアを形に出来るようにしたいな」
いつの間にかシャンとした翔が仕切り出す。
やっと調子が出て来たみたいだ。
確かに全部は難しいかもしれないが、これを形に出来たらかなり可愛らしいカフェが出来上がりそうだ。
「ごめん、智くん。これ1つずつ説明してもらってもいいかな?」
「うん…えっと、これはね…」
智が説明を始める。
曖昧で分かりにくい部分も絵を見れば分かるし、たどたどしくても一生懸命伝えようとする智に、みんなも真剣に耳を傾ける。
より良くなりそうな意見があればどんどん採用して、その都度智が描き直したり描き加えたりして。
話し合いが終わる頃にはかなり具体的に内装が固まっていた。