第12章 文化祭
ニノのおかげで翔の機嫌はすぐ直ったものの、そのままイチャイチャモードに入ってしまって。
くっついたままハートを撒き散らし始めた2人を、なんとなくクラス中で見守ってしまっていたけれど、はたと我に返った。
いやいや、こんな呑気に見てる場合じゃねぇな。
これじゃいつまでたっても話し合いが終わらない。
2人のそばに近付いてとりあえず目線で訴えてみたけど、周りが見えていない2人は視線どころか俺の存在にすら気づかない。
「んんっ…」
わざとらしい咳払いをしてみても、耳に届いていない様子だ。
仕方ない、実力行使しかないか。
「イチャつくのは後にしろ!!話し合いが進まねーだろ!!」
声を掛けながら、ニノを抱き締めて離さない翔を力づくで引き剥がす。
そのまま引きずって戻ろうとしたら
「カズー!!」
「翔ちゃーん!!」
お互いの名前を呼びながら手を伸ばし合ってて。
ジタバタする翔と、寂しそうに遠ざかる翔を見つめるニノ。
いや、大袈裟すぎんだろ。
お前らはロミジュリか!
まるで俺が2人の仲を引き裂こうとしてる悪役みたいじゃねーか!
同じ教室内にいるんだから、離れるっつったってほんの数メートルだろうよ。
今生の別れみたいに騒ぐなよな。
呆れて脱力しそうになるが、ぐっと力を込めて堪える。
「潤!離せっ!」
「団体行動なんだからちょっとはイチャイチャを自重しろ!協調性を持て!」
翔は筋肉がある割にそんなに力があるわけでもないから、多少暴れられてもなんてことない。
説教しながら、元の場所まで連れ帰った。