第12章 文化祭
ーMsideー
智が集中モードに入った。
絵を描いている時と同様に、智だけ周囲から遮断された場所にいるようだ。
真剣に考え込む智はやっぱりとても綺麗で。
思わず見惚れてしまうけど、それは俺だけじゃないと思う。
他のやつらもポーッとした目で智を見ている気がする。
こんな綺麗な智は誰にも見せたくなかった…なんて思ってしまうけど、もちろん口には出さない。
恋人でもない俺にそんなこと言う権利なんてないから。
内心めちゃくちゃ面白くないけど、それを表に出さないように気を付けた。
智を待ちながら各々も内装を考える静かな時間。
急に裏方チームの方から歓声が聞こえて、なんか盛り上がってるなと思ったら。
次の瞬間、隣にいたはずの翔が消えた。
驚いて辺りを見回すと、翔は瞬間移動のようなスピードでニノの背後に立ち、斗真たちをものすごい目で睨みつけていた。
俺は見てなかったけど、あいつらがニノにチョッカイかけるか何かしたんだろうな。
みんな翔とニノの関係のことは嫌ってほど知ってるんだから、そんな大したことはしてないと思うけど。
今の翔はニノとチームが分かれてイラついてるから、いつも以上に沸点が低くなってるんだろう。
翔は全員ニノから引いたのを確認すると、鬼のような形相のまま無言でニノを抱き締めた。
バックハグ状態だからニノからはその表情は見えないだろうけど、もし見えたら怯えられそうな顔だ。
口にこそ出さないけど、翔は全身でニノは自分のものだと叫んでいて。
独占欲丸出しの行動にみんな苦笑いするしかない。
でもこれだけ自分の感情に素直に動けるのも、それをニノにも周りにもすんなり受け入れられてるのも、それが出来ない俺にはちょっと羨ましかった。